火垂るの墓はなぜジブリじゃない?Netflixで配信“解禁”された理由を解説!

「火垂るの墓」ジブリじゃない?

『火垂るの墓』はジブリじゃないの?

ジブリファンの中でも、このような疑問を持つ方は少なくありません。

実は『火垂るの墓』は、一般に言う“ジブリ作品”の枠組みからは外れています。

スタジオジブリが制作した作品でありながら、他のジブリ作品とは制作の経緯や権利関係が異なるため、扱いが少し特殊なのです。

本記事では、その理由と背景を、『火垂るの墓』制作秘話に触れつつ、分かりやすく解説します。

当記事を読んで、「『火垂るの墓』はジブリじゃないの?」「どうして他のジブリ作品は国内のネトフリで観られないの?」というモヤモヤを、スッキリ解消しましょう。

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『火垂るの墓』はジブリじゃない?【結論と理由】

『火垂るの墓』は“ジブリ”であり、“ジブリじゃない”

ポイント

●制作はジブリ、著作権は新潮社。

 →特殊な背景が、配信・放送の状況に影響している。

1.『火垂るの墓』の著作権は新潮社が保有している

『火垂るの墓』ポスター
© 野坂昭如/新潮社, 1988

▲1988年公開の映画『火垂るの墓』のポスター。ポスターの下部には、「スタジオジブリ製作」と表記がありながら、「新潮社作品」と表記されている。

『火垂るの墓』の著作権は、ジブリではなく、新潮社にあります。

まさか、『火垂るの墓』の著作権がジブリにないとは…。

これでは、“ジブリじゃない”といわれるのも、頷けますよね。

じゃあ、どこが作ったの?となります。

しかし誤解しないでいただきたいのは、『火垂るの墓』の著作権が新潮社にあろうとも、作品そのものは高畑勲監督の指揮の元、ジブリスタッフが魂をこめてが演出した作品であることには変わらないということです。

これは、スタジオジブリ公式サイトでも、ジブリ作品の中の一本として紹介されていることでも分かる通り。

『火垂るの墓』は、ジブリ作品です。

しかし、

『火垂るの墓』の著作権者はジブリじゃない

『火垂るの墓』は他ジブリ作品と配給・配信条件が異なる

スタジオジブリ作品の著作権は、一般的にスタジオジブリ側が保有します。

しかし『火垂るの墓』は他のジブリ作品とは異なり、新潮社が著作権を保有しています。

この影響で『火垂るの墓』は、その他のジブリ作品とは、配給・配信条件が異なっています。

顕著な例が、『火垂るの墓』だけ、国内(ネトフリ)で配信が決まったこと。

ん?なんかおかしいぞ?と、ユーザーは“違和感”を感じることに。これが、

もしかして、『火垂るの墓』って、ジブリじゃない?

という疑問に繋がっていくわけなのです。

なぜ『火垂るの墓』の著作権者はジブリじゃないの?【制作秘話】

ポイント

●『火垂るの墓』は『となりのトトロ』を通す為に生まれた名作。

●新潮社が出資、徳間書店は消極的だった。

スタジオジブリは、高畑勲監督、宮崎駿両監督のアニメーション映画制作を目的として、株式会社徳間書店が中心となって設立した、アニメーション・スタジオです。

『火垂るの墓』の著作権者がジブリじゃない理由

『火垂るの墓』の著作権者がジブリじゃない理由。

それは、

『火垂るの墓』に出資したのが、新潮社だった為です。

当時スタジオジブリの親会社だった徳間書店ではありませんでした。

つまり、『火垂るの墓』の資金提供元は、同じジブリ作品の中でも異なっていました。

なぜ徳間書店は、『火垂るの墓』に出資することを拒んだのでしょうか?

『火垂るの墓』制作秘話

『火垂るの墓』は、宮崎駿監督が長年温めていた『となりのトトロ』の企画を通す為に生まれた作品でした。

スタジオジブリが設立され、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』と公開した後でした。

鈴木敏夫プロデューサーは、次は宮崎駿監督が長年温めていた『となりのトトロ』を制作したいと、考えました。

しかし徳間書店はこれに乗り気ではありませんでした。

徳間書店とトトロのイメージ画像
https://ghiblist.com

そこで鈴木敏夫プロデューサーは、二本立てにすることで、GOサインをもらうことを思い付きます。

高畑勲監督に映画を作ってもらうのにも、絶好の機会であると考えました。

こうして生まれたのが、高畑勲監督の『火垂るの墓』でした。

しかし徳間書店の回答は…

「バカ野郎!“オバケ”だけかと思ったら、そこに“墓”までくっつけるのか!」

ということで、結局企画は結局通らずでした。

『火垂るの墓』と二本立て上映作戦は、むしろマイナスに働いたようですね。

それもそのはず、徳間書店は元々、『となりのトトロ』にNGを出した段階で、

「ナウシカやラピュタのような、冒険型ファンタジーではなく、おばけの話では、商売にならない」と話していたのです。

お怒りになるのも、ごもっともだったといえます。

徳間書店とトトロと清太と節子のイメージ画像
https://ghiblist.com

しかしそんなとき、救世主が現れます。

そう、新潮社です。

鈴木敏夫プロデューサーの耳に、「新潮社の社長が、アニメや漫画をやりたがっている」という話が入ってきたのです。

『火垂るの墓』の文庫の版元は新潮社だということで、これはもう、渡りに船。

やり手の鈴木俊夫プロデューサーは、老舗の新潮社の社長から、徳間書店の社長に「よろしく」と電話を一本入れてもらうことで、ついに企画を動かしました!

こうして『火垂るの墓』と『となりのトトロ』は、1988年に同時上映された、というわけなのでした。

そして、『火垂るの墓』の著作権は新潮社が保有した、というわけだったのでした。


こうして振り返ると、結果論ですが、端から見て、『火垂るの墓』に出資することをしなかった徳間書店は、惜しいことをしたなと思いますよね。

『火垂るの墓』は、野坂昭如さんの同名短編小説を原作とした、太平洋戦争末期の神戸を舞台に戦争孤児の兄妹を描いた作品です。

新潮社の支援の元、世に送り出されました。

その重く悲しいテーマゆえに、「ジブリ作品の中で最も暗い」とも評されることもある『火垂るの墓』は、新潮社にとって初めての映像制作参加作品となりました。

一方『となりのトトロ』は、明るく、ファンタジックな物語です。

徳間書店の支援の元、世に送り出されました。

この対照的な両作品が同時に上映されたのには、以上のような経緯があったのですね。

『火垂るの墓』と他のジブリ作品との違い【事例で紹介】

『火垂るの墓』はスタジオジブリが制作した名作であるにもかかわらず、他のジブリ作品と比べて、“ちょっと扱いが違う…”と感じたことはありませんか?

ここでは、いくつかの事例からその違いをわかりやすくご紹介します。

  • ネット配信の有無
  • 金曜ロードショーでの扱い
  • 公式画像提供の有無 など
項目 火垂るの墓 となりのトトロ
著作権の保有先 新潮社 スタジオジブリ
ネット配信(Netflix) 配信あり(2024~海外、2025~国内) 配信なし(2020~海外、日本×)
金曜ロードショーでの扱い ジブリ以外の作品と同列 特別枠
公式サイトでのフリー画像提供 なし あり
監督 高畑勲 宮崎駿

①ネット配信の有無

まず注目したいのが、「配信サービスで観られるかどうか」という点です。

2020年以降、ジブリ作品は世界中でNetflixを通じて配信解禁されました。

が、日本国内では依然としてサブスク非対応のままでした。

ところが――
『火垂るの墓』だけは2025年7月、Netflix(日本)でも配信が解禁されました。

この「ジブリで唯一、国内Netflixで観られる作品」という立ち位置が、多くの視聴者に“あれ、火垂るの墓ってジブリなのに…?”という違和感を与えるきっかけになったとも言えます。

この特例的な配信対応の裏には、著作権が新潮社にあるため、配信方針もジブリ本体とは異なる判断ができるという事情があります。

②金曜ロードショーでの扱い

金曜ロードショー

次に、テレビ放送での扱いの違いです。

ジブリ作品といえば、「金曜ロードショー」での定期的な放送がすっかりおなじみ。

『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』などは、視聴率稼ぎの定番とも言えるほどの人気ぶりです。

しかし『火垂るの墓』に関しては、2018年の高畑勲監督追悼放送を最後に、長らく地上波から姿を消していました。(※7年ぶり(2025年)にようやく復活)

これは、「作品が重いから」「トラウマになるから」という印象論だけではありません。

実際には、放映権が新潮社にあるため、日本テレビが他のジブリ作品よりも慎重にならざるを得なかったというビジネス的背景が関係しています。

③公式画像の提供の有無

スタジオジブリは、公式サイトにてファン向けに高画質な場面写真(フリー画像)を提供してくれています。

ですが――
不思議なことに、『火垂るの墓』だけはその対象外。ジブリ公式サイトのフリー画像一覧に『火垂るの墓』は含まれていません

作品の重たい雰囲気もあいまって、いわくありげに映り、なんとなくシリアスな印象を受けます。

しかしこれも、著作権がスタジオジブリにないことによる“扱いの違い”の一例です。

ジブリ作品ではありながら、画像使用なども独自のルールが適用されるため、公式でも別枠のように扱われているんですね。

だから『火垂るの墓』はジブリでもNetflixで国内解禁できた!【解禁の理由】

これまで、あの名作『火垂るの墓』は、他のジブリ作品と同様、国内ではサブスク配信されず、DVDや地上波放送のみで楽しむことができました。

しかし、2025年の夏、7月15日より、ついに国内でもNetflix(ネットフリックス)で配信が解禁されたことは、ご存知ですか?

実はここに至るまでには、いくつかのドラマがあったようです。

『火垂るの墓』がNetflix(ネットフリックス)にて国内配信されるまでの経緯
  1. 『火垂るの墓』をテレビで見る機会が減少
  2. 『火垂るの墓』の放送を望む視聴者たちの声
  3. 高畑勲監督さんの追悼
  4. Netflix(ネットフリックス)からの熱いオファー
  5. Netflix(ネットフリックス)での海外配信が大成功

それでは、『火垂るの墓』がNetflix(ネトフリ)で国内配信されるまでの背景を、ちょっと覗いてみましょうか。

※以下、新潮社コンテンツ事業室室長・矢代新一郎さんのインタビューより。

1.『火垂るの墓』をテレビで見る機会が減少

「火垂るの墓」、昔は夏になると、テレビで何度も放送されていたそうです。

もう定番中の定番で、あの感動を心待ちにしていた、という人も多かったかもしれません。

しかしそれがだんだん放送されなくなりました。

地上波では、2018年に日本テレビで放送されたのを最後に、見なくなりました。

こうして、「火垂るの墓」は気軽に触れることのできる作品ではなくなってしまいました。

2.『火垂るの墓』の放送を望む視聴者たちの声

テレビ放送は減りましたが、視聴者が『火垂るの墓』を忘れることはありませんでした。

近年では、特に8月15日の終戦記念日には、SNSで「『火垂るの墓』は絶対に観るべき作品」として、ファン同士で自発的に語り合う光景が毎年繰り広げられていました。

3. 高畑勲監督さんの追悼

高畑勲監督は2018年、肺がんの為に亡くなられました。

このことをきっかけに新潮社は、(この素晴らしい作品を、世界中の人に観てもらいたい)と動き出します。

具体的には何をしたかというと、『火垂るの墓』のバラバラだった海外配信の権利を、全て「リセット」したのでした。

というのも、これまで『火垂るの墓』の海外配信権は、色々な国や地域で複数のプラットフォームと個別に契約されていて、期間もバラバラ、管理するのがとても大変だったみたいなんです。

そこで新潮社は、全ての契約を一度白紙に戻すという、大きな決断をしたのです。

こうして、『火垂るの墓』の配信権利は一昨年にはどこ持っていない、というゼロの状態になりました。

4. Netflix(ネットフリックス)からの熱いオファー

新潮社は、東宝とタッグを組んで、世界に向けたプロモーションを展開することになりました。

そして迎えたカンヌ国際映画祭の会場では、『火垂るの墓』はなんと、『ゴジラ-1.0』と並んで紹介されました!

特に同じ「戦争」をモチーフにした『ゴジラ-1.0』との相乗効果が非常に高く評価された様子です。

各社から「うちで配信したい!」というオファーが殺到したそうですよ。

そしてその中から最終的に選ばれたのが、Netflix(ネトフリ)でした。

決め手は、Netflix(ネトフリ)が熱心に“世界中で一括配信できるプラン”を提案してくれたことでした。

5. Netflix(ネットフリックス)での海外配信が大成功

こうしてNetflix(ネトフリ)で『火垂るの墓』の配信が始まると、世界中で大きな反響を呼びました。

特にベトナムや中南米の15カ国では、配信だけでなく、劇場公開まで行われた程!

『火垂るの墓』というこの素晴らしい物語が、世界中の人々に届くきっかけになったのは、本当に喜ばしいことですよね。

そしてついに…日本でも『火垂るの墓』が配信開始!

Netflixの(ネットフリックス)での海世界配信での成功を受け、日本での配信開始のタイミングは今が良いと、判断したということのようです。

2025年はちょうど戦後80周年という節目の年ですから、本当にタイミングはバッチリでしたね。

こうして、『火垂るの墓』は、一度は減ってしまった視聴の機会を乗り越え、2025年夏に日本を含む全世界で新たなスタートを切りました。

それまでに新潮社がやったこと。

それは、権利を整理し、東宝とタッグを組んで国際的なプロモーションを展開し、Netflixとタッグを組んで世界に向けて配信したことでした。

これらは全て、新潮社が、「高畑勲監督の名作『火垂るの墓』をより多くの人に観てもらいたい」と動いた結果です。

『火垂るの墓』は、近年では地上波放送も見られなくなっていました。

が、これからは観たい時にいつでもNetflixで『火垂るの墓』が楽しめるなんて、本当にありがたいことですよね。

まとめ:『火垂るの墓』は“ジブリ”であり、“ジブリじゃない”

まとめ

『火垂るの墓』はれっきとしたジブリ作品です。

しかしその著作権はジブリにはなく、新潮社にあります。

『火垂るの墓』が「ジブリじゃない」と言われる背景には、著作権事情があったのですね。

これは、本作の成り立ちを知れば納得できるものです。

そしてこの違いは、その後の配給やメディア展開にも影響を及ぼしてきました。

これまで『火垂るの墓』は、名作ながら、DVDやテレビでしか観ることができなくなっていました。

近年では、「放送禁止説」が浮上する程、地上波でも見られなくなっていました。

しかし、ついに!

新潮社が配信権利を一新し、Netflixに踏み出しました。

そして、2025年7月15日からは、日本のNetflixでも観られるように。。

実はその裏には、色々な想いや努力がありました。

新潮社コンテンツ事業室室長の矢代新一郎さんは、海外の人が皆同じように感動する姿を観て、『火垂るの墓』には、観る者をひとつにする力があることを感じたといいいます。

そして、世界中の皆がほぼ同じような感情を持っていることの素晴らしさに気が付いたといいます。

『火垂るの墓』を通じて、世界が一歩一歩平和に前進していきそうです。

このすばらしさを日本の皆様にも気づいていただきたい

矢代新一郎さんは言います。

皆さんもぜひこの機会に、改めてこの名作に触れてみてはいかがでしょうか。

そして『火垂るの墓』の背景にある物語も含めて味わってみてください。

参考:
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0f0731bdede0641ef6a36ade05694aaa26680b09
文春文庫・スタジオジブリ編『ジブリの教科書 火垂るの墓』

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