2025年、スタジオジブリの不朽の名作『火垂るの墓』が、今再び多くの人々の前に戻ってきます。
戦後80年という節目に、なんと7年ぶりに「金曜ロードショー」で地上波に復活するだけでなく、ついにNetflix(ネトフリ)でも日本発の配信が解禁されることに。
そこで、「『火垂るの墓』って放送禁止になったんじゃないの?」というウワサ、聞いたことありませんか?
長年言われ続けた、「放送禁止説」の真相とは。
「放送禁止説」から、『火垂るの墓』が地上波復活と配信解禁になった経緯まで、じっくりと掘り下げていきましょう。
「火垂るの墓」“放送禁止説”と、金ロー“空白の7年間”の真相とは

悲惨すぎるから放送されなくなった?
地上波NGになったのでは?
「火垂るの墓」地上波“放送禁止説”の真相
SNSなどでは「火垂るの墓は放送禁止になったのでは?」というウワサが広がっていましたが、事実として、結論、「火垂るの墓」が放送禁止になったことはありません。
金曜ロードショーでは、「となりのトトロ」や「風の谷のナウシカ」など、もっと明るいエンターテイメント性の高いジブリ作品が何度も放送される中、「火垂るの墓」は2018年を最後に、放送しなくなりました。
その為SNSでは、「『火垂るの墓』は地上波NGなのでは?」といった臆測が飛び交うように。
しかし2025年5月26日、日本テレビの福田博之社長は会見にて、
ほかにも放送していないジブリ作品はある。特別な理由があるわけではなく、色々な状況から編成判断をしている
引用元:朝日新聞(https://digital.asahi.com)
と弁明しています。
放送禁止されていなかったのであれば、なぜ「火垂るの墓」は長らく放送されていなかったのでしょうか?
日本テレビがいう「火垂るの墓」を放送しなくなった“色々な状況”とは…?
「火垂るの墓」金ロー“空白の7年間”の真相

「火垂るの墓」が地上派から遠ざかった主な背景要因として、次のことが考えられます。
視聴率が下がったことにより、放送される優先順位も低くなった為。
もっとシンプルにいえば、
利益にならない為
だということができます。
民放キー局は広告収入で成り立つ株式会社です。
視聴率の取れない番組は、スポンサーから収益を得る為に、優先順位を下げざるを得ないのですね。
それで、「火垂るの墓」は地上派から姿を消していたのです。
しかし「火垂るの墓」は、「収入にならないので放送しない」とは言い難い内容の映画です。
このご時世、炎上することは目に見えていますからね。
それで、答える方もオブラードに包むしかなかったのかもしれません。
- 「火垂るの墓」が金ローで7年も放送されなかった理由はこの他(視聴率低下)にも、
- 新作増加による編成上の限界
- 新作映画が増えていく中で、1本あたりの放送回数は必然的に減る。
- 別途放送料を支払う必要がある
- 日本テレビはほとんどのジブリ作品の放送権・著作権を自社で保有しているが、「火垂るの墓」だけは別で、新潮社が権利を持つ。
↓
その為、同じジブリ作品でも「火垂るの墓」は放送回ごとに別途使用料を支払わねばならない。
↓
よって「火垂るの墓」はジブリ枠でジブリ作品と競合するというより、その他大多数の人気作品と競合することになると考えられる。
- 日本テレビはほとんどのジブリ作品の放送権・著作権を自社で保有しているが、「火垂るの墓」だけは別で、新潮社が権利を持つ。
ということが考えられます。
他にもネット上には、「『火垂るの墓』にある過激描写でトラウマを訴えるクレームが日本テレビに寄せられたから」という説が囁かれていることがあります。
▶こちらが地上波で放送されない『火垂るの墓』のトラウマシーン
が、そのようなクレームがあったという一次情報や報道は確認できません。
放送倫理委員会などの記録にも、映像倫理や放送倫理に関する公的なクレーム集計(放送倫理・番組向上機構 BPO など)に、『火垂るの墓』をめぐる子どものトラウマ訴えに関する案件は登録されていません。
したがって、「過激描写でトラウマを訴えるクレームが日本テレビに寄せられた」という話は、信憑性の低いネットの噂と見て良いでしょう。
ということで、「火垂るの墓」が地上波で放送されなくなった理由を、最後にもう一度まとめると、
視聴率の低迷によりスポンサー収入が減少
↓
番組編成の優先度が下がる
という以上の流れがあって、「火垂るの墓」が地上波から遠ざかったものと思われます。
ところで、なぜ視聴率が低いとテレビ局の収入が減るのでしょうか?
疑問に持たれている方がいるかもしれませんので、テレビ局の収入のしくみについて、簡単にお話します。
なぜ視聴率が低いと収入が減る?

テレビ番組の主な収入源は、スポンサーからの広告収入。
視聴率が望めなくなると、スポンサー離れが起こるなどする故に、テレビ局に入る収入も減ってしまう、というわけなのでした。
つまりこういうこと
スポンサー(広告主)は、より多くの人にCMを見てもらいたいと考えます。
その為、スポンサーは視聴率の高い番組のCM枠を購入する傾向にあります。
番組の視聴率が低くなると、その番組のCM枠を購入するスポンサーが減ります。
その結果、広告収入が減少します。
番組を放送できる時間には限りがあります。
それなので、テレビ局はより収益性の高い、つまり視聴率が見込める番組を優先しようとします。
よって、視聴率の見込めない番組は、地上波での放送機会が減少する傾向にあるのです。
金曜ロードショー「火垂るの墓」の視聴率推移

- ピーク時(2001年):最高視聴率21.5%を記録
- 低迷期(2010年代):6~9%台の低視聴率が常態化
「火垂るの墓」の視聴率は、2001年の最高視聴率(21.5%)をピークに、2010年代には低視聴率(6~9%台)が続きました。
初期の高視聴率から徐々に下降し続けた結果、金曜ロードショーから「火垂るの墓」が消えたと考えられます。
「火垂るの墓」視聴率詳細
『火垂るの墓』放送日 | 『火垂るの墓』視聴率 |
---|---|
1989年08月11日 | 20.9 |
1990年08月17日 | 10.7 |
1993年08月13日 | 14.5 |
1997年08月08日 | 19.1 |
1999年08月06日 | 18.8 |
2001年08月10日 | 21.5 |
2003年08月22日 | 15.1 |
2005年08月05日 | 13.2 |
2007年09月21日 | 7.7 |
2009年08月14日 | 9.4 |
2013年11月22日 | 9.5 |
2015年08月14日 | 9.4 |
2018年04月13日 | 6.7 |
こうして表にして見ると、『火垂るの墓』を放送したくなくなる理由も分かりますよね。
それでは、「火垂るの墓」の視聴率が低迷したのはナゼ?
「火垂るの墓」の視聴率が低迷した理由
「火垂るの墓」の視聴率が低迷した理由として、
「家族で安心して楽しむジブリ作品」というイメージから外れて、視聴者層の幅が狭まっていることが考えられます。
「火垂るの墓」には、重厚な戦争描写があるので、「トラウマになった」という声も多く、子供に見せるべきか、悩む親は多いです。
「火垂るの墓」が2025年に金ローで7年ぶりに復活する理由とは

日本テレビの福田博之社長は2025年5月26日、「火垂るの墓」が2025年金曜ロードショーで7年ぶりに復活する理由について、会見で次のように説明していました。
かなり前から放送予定で作業を進めていたが、多くの声を頂いたことも検討段階で配慮した。戦後80年の節目に改めて見ていただきたい作品だ
引用元:朝日新聞(https://digital.asahi.com)
- 「火垂るの墓」の放送を望む多くの声が寄せられていた
- 戦後80周年の節目に観てもらいたい
ということですね。
2025年8月15日は、戦後80周年目の年であり、8月15日は終戦記念日です。
この放送日には、特別な想いが込められているようです。
相次いだ放送を望む声

「火垂るの墓」の放送を望む声は、ネトフリでの海外配信が始まって以降相次ぐようになったといいます。
が、ネトフリでの日本での配信が決まった後も、それは変わらなかったといいます。
それまでにも、SNS上には「火垂るの墓」の放送を切望する声が寄せられていました。
それは終戦の時期になると特に多くなっていたように思います。
そんな中で迎えた2025年は終戦80周年ということで、今回はいよいよ放送を避けては通れなくなった、ということかもしれませんね。
2025年は視聴なるか

それに2025年は、放送のネックになっていた視聴率にも期待ができそうです。
というのも、「火垂るの墓」は今次の条件が揃っていることから、注目を集めている為です。
- 金曜ロードショーの放送日がちょうど戦後80周年の終戦日8月15日と重なっている
- 7年ぶりの地上波放送
- 去年ネットフリックスにて世界で配信開始
- 7月15日より国内でもネットフリックスでも配信開始
放送のネックとなっていた低視聴率が打破されるのであればもう、放送を踏みとどまる理由もなくなります。
今後の継続的なオンエアを願う為にも、当日はできるだけテレビの前で『火垂るの墓』を視聴しておきたいですね。
「火垂るの墓」金曜ロードショーにおける放送実績

「火垂るの墓」は金曜ロードショーにて、1989年~2018年4月13日までで、1~4年おきに計13回放送されてきました。
- 1989年 08月11日(初回放送)
- 1990年 08月17日
――――――――
―――――――― - 1993年 08月13日
――――――――
――――――――(戦後50周年)
―――――――― - 1997年 08月08日
――――――――
1999年 08月06日
―――――――― - 2001年 08月10日
―――――――― - 2003年 08月22日
―――――――― - 2005年 08月05日(8回目。戦後60周年)
―――――――― - 2007年 09月21日
―――――――― - 2009年 08月14日
――――――――
――――――――
―――――――― - 2013年 11月22日
―――――――― - 2015年 08月14日(12回目。戦後70周年)
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―――――――― - 2018年 04月13日(13回目。高畑勲監督が2018年4月5日にご逝去されたことを受けての、追悼放送回)
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――――――――
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―――――――― - 2025年 8月15日(14回目。戦後80周年)
14回中、12回が、終戦月にあわせた8月に放送されていますね。
また、何周年という節目の年にもほぼ放送されていることが分かります。
「火垂るの墓」は、2018年4月の高畑勲監督追悼放送を最後に、地上波での放送が途絶えていました。
しかし2025年8月15日、終戦80年という節目の日に、金曜ロードショーでの放送が決定。
地上波では実に7年ぶりの放送となります。
「火垂るの墓」が金ローで7年ぶりに放送決定!

「火垂るの墓」が、2025年8月15日、7年の空白を破り、地上波「金曜ロードショー」で放送されることが決っています。
戦争のむなしさ、そして命の尊さ、平和の大切さを、記念日に放送することで、我々、特に若い世代にもう一度考えてほしい、そんなメッセージが込められているように思います。
2025年で日本は戦後80周年を迎えましたが、近年ではまた兵力を保持しようという怪しい動きが見られていますね。
世界では、今も戦時中の国々があり、清太と節子のような犠牲者が多くいます。
「火垂るの墓」は確かに過去の物語ですが、しかし一概に過去の物語だと言い切ることはできないのですね。
「火垂るの墓」は、戦争の現実を伝える大切な作品だからこそ、放送のあり方や編集の意義についても考えさせられる一作です。
【まとめ】『火垂るの墓』金ロー7年ぶり復活の理由と、放送禁止説の真相(2025年)
『火垂るの墓』は、戦争の悲劇と、どんな状況でも輝く命の尊さを、私たちに静かに問いかけてくる、不朽の名作です。
『火垂るの墓』の「放送禁止説」は事実ではなく、視聴率のことや、権利関係のことなど、いろいろな配慮が広がって、一時的にテレビから遠ざかっていたのですね。
それが、「空白の7年」だったんですね。
高畑勲監督は、「火垂るの墓」は反戦映画のつもりで制作したのではないといいますが…
(そんな大それたものを作るのは難しい、と感じていたらしい)
「火垂るの墓」は反戦映画として世界的に高い評価を受けているようです。
世界から戦争が無くならず、第三次世界大戦が危惧される今だからこそ、次の世代に伝えたい「命の物語」として、皆でじっくり向き合いたい作品です。
この機会に、あなたも『火垂るの墓』を見て、感じたことをぜひ教えてください。
参考URL:
https://digital.asahi.com/articles/AST5V0FMPT5VULLI00QM.html?pn=9&unlock=1#continuehere
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88322
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